· 

島根の珈琲 第一弾

 地元の人が勧める珈琲館

 

 初めての土地でどこかいい場所にと思ったら、ガイドブックもいいけど、やっぱり地元の方に伺って、おいしいところを探すのが一番!だと思う。自分で開拓するのを避けるずぼらな性格ともいえるが、格好よく言えば根っからの現場主義ということでもある。

 縁あって今年から島根県と関りもできたこともあり、県内の喫茶店やコーヒーの歴史を探っていこうと思う。

 というわけで、さっそく松江市に行く用事ができたので、まずは松江市在住者の方に伺ってみると、「珈琲館」を紹介してくれた。ちなみにここはガイドブックにも掲載されているとか。

 松江市は島根県東部(出雲地方)に位置する宍道湖畔の風光明媚な都市である。有名なヤマトシジミの漁も街の中から見える水の都だ。松江藩の城下町を中心に発展してきた山陰の中心都市でもある松江市には松江城があり、県庁所在地でもある。

 日本海側気候であり、冬は曇りや雨、雪の日が多い。山陰地方の拠点都市の一つであるため、米子市と共に鳥取・島根両県を統括する支店が多く置かれている。また、山陰地域で展開する企業の本社も多い。

 

 堀川に面して佇む

 

 「珈琲館」は、その松江市内の、カラコロ広場の脇、堀川に面してある。周囲には、旧日銀の建物があり、蔦がからまるレンガ作り、奥に長い建物がひときわ街に映える。

 建物は二階建て、お店入口脇に焙煎室がある。1階では、カウンターとテーブル席がある。カウンター越しにコーヒーを入れる様子が見ることができる。2階は、テーブル席のみ。訪れた当日は、夜の8時頃、入口すぐの階段を上がって2階の席に座った。旧日銀の建物がライトアップされ、川辺の灯りが重なり、幻想的な雰囲気をかもしだす。

 縦に長い店内は、川辺に沿って建っているため、景色を眺めながらのコーヒーはまた格別。一人でずっと座っていたくなる。 

 注文したのは、ブレンド。夕飯を食べたが、小腹もすいていたので、オープンサンドイッチも注文。ブレンドはコクが強め。酸味もしっかりとあるおいしさ。さめにくいように分厚いカップだった。私はブラックコーヒー派だが、この店を紹介してくれた人が、「ミルクも入れて飲んでほしい」と言うので、ミルクを入れて飲んでみると、コーヒーのうまみがさらに引き立つ。

 レンガ造りで、出窓には、花が植わった鉢が飾られている。夜はライトアップされているが、そのかわいらしい雰囲気に昼間の様子も知りたいと思った。翌朝、戻る前に珈琲館に寄る。朝8時から営業しているので、早朝の周辺散歩の後、モーニングコーヒーを飲みに寄ってみた。

 昨夜とは雰囲気がまた変わる。川の特徴がよりクローズアップされ、川が見える場所に席を取る。コーヒーは場所も味のうちと納得する瞬間だ。昼でも夜でも、いつでも寄りたくなる店は希有な存在だろう。 

 有名人のエッセイにも登場するこの珈琲館。山口瞳の本の中では、風流堂とともに松江に来たら必ず寄るお店だと書いてある。太田和彦氏も昼間に街を散策した後立ち寄ったと書いてある。

 そんな文人たちの文章を読むと、ますますこの珈琲館が好きになるから勝手なものだ。コーヒーと文人は昔から切っても切り離せない感じがするからなおさらなのだろう。

 

 オリジナルコーヒーも販売

 

 珈琲館の味は家庭でも楽しめる。私もさっそく購入。特に一杯ずつカップにあわせていれることのできるタイプはとっても重宝。自宅でも手軽に一杯ずついれられるので、便利だ。

 ヨーロピアンブレンドとマイルドブレンドの2種類がある。豆も販売。全国発送も行っている。

 

 個性豊かな喫茶店が集う県

 

 島根県には個性豊かな喫茶店が集うと在住の人が教えてくれた。人口が少ないからチェーン店など経済効率ありきのお店はあまり出店にメリットを感じないのか、はたまたオリジナルのお店の味に魅力を感じる人が多いせいか、特徴あるお店があるという。次回からは少しずつそのようなお店を回ってみようと思う。

 

『四季の珈琲』2012 vol.34