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沖縄のコーヒー事情 2

沖縄県のコーヒー業界の動きが活発化している。

コーヒーに関するネットワークがそれぞれの目的で縦横無尽につながり、

沖縄県のコーヒー業界を強くしていく様子がかいまみえる。

この後も業界の動向に目が離せない。

 

 

 

 

 相次ぐコーヒー団体の設立

 

 43号、44号と2号にわたって沖縄のコーヒー事情を紹介してきたが、沖縄のコーヒーの話題は尽きることがなく、今号もやはり沖縄のコーヒーに関して紹介したい。沖縄県内のコーヒー業界の周辺は、ここ数年賑やかで活発である。

 県産コーヒー豆の安定生産やブランドの確立を目指すことを目的に平成26(2014)年に設立された「沖縄珈琲生産組合」。平成29(2017)年4月には、北部地方で珈琲を栽培する農家が集って「やんばる珈琲ツーリズム協会」を設立した。同年同月、沖縄県産コーヒーの栽培振興を目指し、「一般社団法人沖縄コーヒー協会」も設立された。同協会は、県内のNPO法人や大学教授、生産者が発起人となり、4年前に発足されていた任意団体を法人化した。同協会は、沖縄でのコーヒー栽培の技術指導や生産された豆の買い取りなどを担う。また、4月には、設立記念フォーラムが開催された。

 3団体ともそれぞれ目的が異なるが、その異なる目的がそれぞれ重なり合っているところが、現在の沖縄県内のコーヒー業界の活発化を証明していることでもあろう。

 

 日本初のスペシャルティコーヒー

 

 県内産のコーヒーの生産だけでなく、沖縄産コーヒーに付加価値がついているのも、コーヒー業界が賑やかになっている理由でもある。

 その一つが、厳格な基準を満たした高品質のコーヒー豆だけに与えられる「スペシャルティコーヒー」の認定が、2016年、日本で初めて沖縄県から生まれたことだ。

 北部地域にある国頭村安田で9年前からコーヒー農園を営むご夫婦がつくる「安田珈琲(あだコーヒー)」が、その名誉を得た。

 

 そもそもコーヒー豆の栽培は、沖縄県を含め日本国内では難しいとされていた。特に沖縄は台風の影響でコーヒーの木が倒されてしまい、栽培に困難を極めていたという。しかし、現在では、「コーヒーで地域おこしを」と県内各所でコーヒー業界の活性に果敢に挑んでいる。

 例えば、やはり県内北部地域の今帰仁村(なきじんそん)で、コーヒー農園を営む金城重信氏は、コーヒー農園を観光化させようと、前述した「やんばる珈琲ツーリズム協会」を設立。「沖縄コーヒー」をブランド化させることで、観光集客に結びつけようという狙いだ。

 沖縄県産コーヒーは、まだまだ希少だ。100%県産コーヒー豆で淹れたコーヒーを金城氏が経営するカフェ「花野果(はなやか)」では、1杯1000円で提供している。しかし、その希少性から観光客らには評判がよいという。

 

 離島でもコーヒーで地域おこしに取り組んでいる人たちがいる。レゲエバー「スパイラルマーケット」を経営する人たちが、久米島で2013年からコーヒー農園を始めた。

 ジャマイカからコーヒーの苗を入手し、栽培を始めたというが、初年度は台風の影響などで失敗に終わり、2014年から本格稼働。2017年10月後半から11月前半にかけて、初のコーヒー豆の収穫が見込まれるという。「球美(クミ)珈琲」ブランドで販売したいという希望を持つ経営陣だが、コーヒー栽培からグリーンツーリズムに結びつけたいなど、意気込みをみせている。

 

 またコーヒー豆の栽培だけでなく、コーヒー豆の焙煎にこだわりを見せるカフェや企業の存在も見逃せない。

 「35コーヒー」は、風化したサンゴで焙煎した、沖縄の限定コーヒーだ。自動販売機や那覇空港のお土産専門店、コンビニエンスストアなどで購入することができる。売り上げ3・5%がサンゴ移植で沖縄の海に還元されるという、環境にも配慮したストーリーも人気の一つとなっている。

 沖縄市でコーヒー専門店「豆ポレポレ」を経営する仲村良行氏は、2017年9月、焙煎技術日本一に輝いた来年に行われる世界大会への切符を手にいれた。

 この焙煎技術を競う大会は、「JCRC(ジャパンコーヒーロースティングチャンピオンシップ)」と呼ばれ、一般社団法人日本スペシャルティコーヒー協会が運営し、今年で6回目を迎える。

 予選を経て、決勝となる。競技内容は、予選では、「予選競技会場にて制限時間内で焙煎」と「ブラインドカッピング試験」がある。決勝では、「グリーングレーディング」、「焙煎計画提出」、「本釜焙煎後、シングルオリジンとブレンドを提出」となっている。 

 ラテアートの技術を競う大会も9月には、那覇市の中心地で開催され、県内のカフェからバリスタ12名が参加し、腕を競った。本大会は、県内のカフェ、コーヒー専門店など、横のつながりから生まれ、UCC沖縄などがサポートした。

 

 沖縄県内には、本土の2つの大手コンビニエンスストアチェーンがある。ローソンとファミリーマートだ。沖縄ファミリーマートでは、2010年から「泡盛コーヒー」を販売し、好評を博している。

 インターネット上で火がつき、2017年の6月前半の週間売り上げは、昨年の同時期に比べて3倍というから驚きだ。

 コーヒーに関するネットワークがそれぞれの目的で縦横無尽につながり、沖縄県のコーヒー業界を強くしていく様子がかいまみえる。この後も業界の動向に目が離せない。

 

 

 

『四季の珈琲』2017 vol.45