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沖縄のコーヒー事情 

沖縄県内と離島で100年以上の歴史を持つ「共同売店」。

歴史あるこの取り組みから新たな取り組みが、

コーヒーを媒介して行われようとしている。

共同売店の歴史を紹介しながらレポートしたい。 

 

 

  

 共同売店について

 

 沖縄本島と離島の一部には「共同売店」もしくは「共同店」と呼ばれる小売り店がある(以下、共同売店)。字または区ごと、いわば集落ごとを単位に、地域住民の全戸あるいは有志が出資して運営されている。

 共同売店の歴史は古く、1906(明治39)年に沖縄本島北部地区の国頭村字奥で設立されたのが最初である。「農協」や「生協」などの協同組合組織に似ているが、その存在よりも古く歴史がある。

 共同売店には、「経済的機能」「福祉的機能」「情報的機能」という3点がある。

 経済的機能は、現代では購買活動であるが、かつては農林産物の生産や加工、販売なども行われていた。福祉機能は、電話取次や冠婚葬祭費の援助、共同バスの運行などが挙げられる。

 共同売店は、沖縄の助け合いの精神である「ゆいまーる」の精神が土台にある。明治期、現金至上主義である貨幣経済に対応するために、集落全員で助け合うために共同売店が生まれた。

 共同売店の売り上げは、配当という形で住民に還元された。さらにそれだけでなく、医療 費の貸与、奨学金の給付・貸与などが行われ、集落にとって経済と福祉の両方の機能を持っていた。

 加えて情報的機能は、住民の情報交換の場となっていることである。

 最盛期は、200店舗以上あった共同売店は、現在は60店舗程度であるという。

 共同売店の営業時間は、おおむねどこも朝8時前後から夜9時前後と長い。

 さらに2004年からは、共同売店の知恵を受け継いでいかなければならないと、有志による「共同売店ファンクラブ」という活動も生まれた。

 同ファンクラブによると、「共同売店は地元の人たちが生活するための店で、スーパーや観光施設とは違う。ルールを守って応援してほしい」とし、共同売店を楽しく利用する心得4カ条を提示している。

 

 一、「おじゃまします」の心をもつ

 一、共同売店は「商店」にあらず

 一、会話の後は、何か買うべし

 一、ごみだけ捨てるべからず

 

 住民のくつろぎの場所、共同売店

 

 高齢化、過疎化していく中、共同売店は買い物に困難なお年寄りのための店であったり、情報交換などの「ゆんたく」(おしゃべり)の場であったりする。

 多くの共同売店には、住民がくつろげるスペースが設けてある。ある共同売店には、売店の隣に10畳ほどのスペースを設け、大きなテーブルと椅子が置いてある。

 別の共同売店には、入り口にソファや椅子が置いてある。また別の共同売店には、入り口脇に小上がりを設け、ちゃぶ台と座布団が置かれてある。

 このようなスペースに最近では、コーヒーが登場するようになった。それはインスタントコーヒーではなく、自家焙煎できちんと1杯ずつ淹れられるものだったりする。

 またカフェが併設され、貴重な沖縄産のコーヒーが楽しめる共同売店も登場しはじめたのだ。

 

 安田協同店(あだきょうどうてん)

 安田区は、沖縄本島北部にある国頭村にある。太平洋に面するこの集落は、国の重要無形文化財に指定されている祭り「シヌグ」の地としても知られている。また「ヤンバルクイナの里」としても有名。休みの日となると、県内外から「ヤンバルクイナ生態展示学習施設」で飼育されている「キョンキョン」に会いに人が集う。

 その安田区にある共同売店が「安田協同店」である。ここでは、輸入生豆を自家焙煎した「安田協同店」オリジナルコーヒーが販売されている。

 さらに店でも飲めるようにポットとカップが用意されている。集落の住民は慣れた手つきで自分で淹れる人も多く、店内はたちまちコーヒーのいい香りに包まれる。ホットとアイスがあり、ともに1杯100円。

 ちなみに安田区には、国産コーヒー豆を栽培する農業生産法人アダ・ファームがある。ここのコーヒー豆は、2016年11月2日、国産スペシャルティコーヒーに認定された。

 

 諸志共同売店(しょしきょうどうばいてん)

 県北部に位置する今帰仁村・諸志は、明治36年に諸喜田村と志慶真村が合併した村である。ここにある「諸志売店」には、古民家カフェ「花野果(はなやか)」が併設されている。ここで提供されるコーヒーは、沖縄産コーヒーである。希少なコーヒーであるため、1杯1000円。

 ここの店主である金城重信氏は、コーヒー農園も経営している。県産コーヒーを沖縄の新しい特産品としてブランド化、そして観光につなげようと、2017年4月、「やんばる珈琲ツーリズム協会」を立ち上げたことでも知られる。ちなみに金城氏は日本コーヒー文化学会の会員でもある。

 

 沖縄のコーヒー文化が、歴史ある共同売店から発信されている。新しい取り組みも始まり、ますます目が離せない。

 

『四季の珈琲』2017 vol.44


参考・引用文献

共同売店ファンクラブ http://w1.nirai.ne.jp/kyodobaiten/

(公社)沖縄県田井部美請求権事業協会・助成シリーズ No.55 『共同売店の可能性 -買い物弱者・若者の就業・コミュニティ再生センターとしての共同売店ー』(2015)沖縄大学 宮城能彦研究室