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沖縄のコーヒー

生豆換算で年間推定100〜300キロを生産している沖縄県のコーヒー豆。

その年の台風被害の程度により生産量は変わるため、希少性の高い製品となっている。

今回はそんな沖縄県のコーヒー事情についてレポートする。  

 

 

  

 国産スペシャリティコーヒーの誕生

 

 沖縄県国頭村安田地区にある農業生産法人アダ・ファームから、国産スペシャルティーコーヒーが誕生したというニュースが11月初旬に流れた。

 同ファームのFacebookには、「本格的な栽培を始めてから約5年、高い緯度、低い標高に加え、厳しい環境の沖縄では不可能といわれ続けた高品質生豆の生産。ついにその品質と安田らしさを世界に認めてもらうことができました」というメッセージが掲載されていた。

 

 国産コーヒー豆の歴史

 

 非常に喜ばしいニュースである。同ファームのコメントにもあるように、沖縄県はもとより日本国内では、コーヒー豆の生産は難しいとされているからである。国産コーヒー豆の歴史をひもとくと、明治11(1878)年までさかのぼる。当時の東京都小笠原村、現在の父島に、武士、化学者、外交官、政治家。海軍中将、正二位勲一等子爵という様々な肩書きをもつ榎本武揚と小笠原の初期島治を行った小花作助らが、インドネシアのコーヒーの苗を試植したのが始まりである。

 第二次世界大戦により、父島でのコーヒー豆栽培は中断する。なぜなら全島民が強制的に疎開されることとなったからだ。しかし終戦後、すぐに島民が島に戻ることができたわけではなかった。島に帰ることができたのは実に終戦から23年が過ぎてのことだった。現在、「野瀬農園」が、父島でコーヒー豆栽培を行っているが、戦後23年、ジャングルと化していた農地を再び耕した際、野生化したコーヒーの木を発見し、そこから苗木を作り増やし、今に至っているという。

 

 沖縄県のコーヒー豆栽培

 

 一方、沖縄県でも、国産のコーヒー豆の栽培が行われている。いわゆる「コーヒーベルト」と呼ばれる赤道をはさんだ北緯・南緯25度の間の場所からは外れている。

 しかし、父島と沖縄県でコーヒー豆が栽培される理由は、両地とも亜熱帯地域に属しており、更に温暖な海洋性気候のためコーヒー生産が可能となっているからだ。

 では沖縄県でのコーヒー豆栽培の歴史を、「沖縄珈琲生産組合」(http://coffee.okinawa/ 宮里直昌組合長)のウエブサイトを参考に見てみたい。

 沖縄県にコーヒーの木は、約90年前の大正13(1880)年に、当時造園業だった「桃原農園」の創業者である尚順氏によって持ち込まれたとされている。

 同氏は沖縄県の北部にある本部町伊豆味で国内外の植物を集め栽培の研究を行っていたという。コーヒーの木もその研究の一環だった様子である。

 

 沖縄コーヒー栽培立役者

 

 しかしコーヒー豆の栽培・生産に挑戦したのは、後年になる。沖縄県でコーヒー豆の生産の立役者となったキーパーソンは、うるま市の和宇慶朝伝氏と恩納村の山城武徳氏である。両名ともすでに他界されているが、その功績は高く評価され、引き継がれている。

 和宇慶氏は、約40年前の昭和51(1976)年、高校の教員を退職後、ブラジル農業試験場に飛びコーヒーの種子を入手。沖縄の代表的な品種ブラジル産ムンド・ノーボ(ニューワールド)種の生産に力を尽くしたという。

 山城氏は小学校の校長を退職後、コーヒーの栽培に本格的に着手した。1987年当時には、40キロのコーヒー豆の生産に成功した。

 また一方では、コーヒー栽培の先駆者は、名護市の親川仁吉翁氏という説もある。親川氏は、戦前ブラジルからニューワールドの種子を持ち帰り、栽培したのが最初だという。

 無農薬で栽培が可能

 沖縄県のコーヒー豆は、無農薬で栽培が可能なところが特徴とも言う。これはコーヒーベルトの北限に沖縄県が位置し、これにより木に害虫がつかないということが理由にあるようだ。そこで沖縄珈琲生産組合では、「すべての豆を無農薬で栽培することで、安心と安全性をPRする」とした。

 

 活発化するコーヒー業界

 

 沖縄のコーヒー業界の周辺は、ここ数年賑やかで活発である。それは、県産コーヒー豆の安定生産やブランドの確立を目指すことを目的に平成26(2014)年に設立された「沖縄珈琲生産組合」を見ても明らかだ。以下、①同組合は、コーヒー栽培・焙煎等技術向上の勉強会、②沖縄産コーヒーの認定および商品開発、③沖縄産コーヒーを活用した地域活性化事業 (6次産業化)という3つの事業を柱としてる。今後は、①の勉強会などを通して、生産者の栽培技術を上げ、収穫量を増やし、販路拡大を目指す考えでいる。

 また2016年10月2日(日)沖縄・宜野座村の「がらまんホール」では、沖縄県内のコーヒーロースターが集まり、コーヒーを五感で味わうイベント「okinawa COFFEE festival」が開催された。コーヒーをさまざまな角度から楽しめるイベントとなっており、コーヒーブースは県内から10店舗、島根県、兵庫県から各1店舗、計12店舗が集まり、盛況なうちに幕を閉じた。

 今後ますます目が話せない沖縄県のコーヒー事情だ。次回は沖縄県のこだわりカフェを紹介しよう。

 

 

『四季の珈琲』2016 vol.43