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沖縄のコーヒー事情 3

沖縄県のコーヒー業界の動きが活発化している。

コーヒーに関するネットワークがそれぞれの目的で縦横無尽につながり、

沖縄県のコーヒー業界を強くしていく様子がかいまみえる。

この後も業界の動向に目が離せない。今回は「コーヒーツーリズム」の話題をお届け。

 

 

 

 相次ぐコーヒー団体の設立

 

 沖縄県は4月19日、2017年(1〜12月)の入域観光客数が前年比78万3千百人(9・1%)増の939万6千2百人となり、5年連続で過去最高を更新したと発表した。国内外の航空路線が新規就航したことや、クルーズ船の寄港回数が増えたことが要因で、国内客、外国客とも過去最高となった。同年のハワイの観光客数を初めて上回ったこともあり、話題を呼んでいる。

 好調な沖縄の観光業だが、新たな観光PRとして「コーヒーツーリズム」が登場している。

 

 生産量増加を目指して

 

 沖縄珈琲生産組合によると、今年度生産量は約250㎏(生豆)を予定していますが、来年度は750㎏、再来年度には3トンが見込めるようになっているという。、もちろんこの量ではコーヒー農家が生計を立てるのは難しい。しかし、生産量を伸ばし、コーヒーを沖縄の農業の代表的な一つとして位置づけることを目標にしている。

 

 栽培条件に合った沖縄のコーヒー

 

 コーヒーの木を育てるには条件がある。コーヒーの木は、「雨、日当たり、温度、土質」という4つの条件を満たしていなければならない。その条件を満たしているのが、赤道直下の南北回帰線北緯、南緯それぞれ25度に囲まれたエリアである。沖縄県の北部地域はそのコーヒーベルトと呼ばれる範囲ギリギリに入る。

 しかし、沖縄県は台風が多く、これまでコーヒー農園を立ち上げては、台風でコーヒーの木が全滅してしまうなど、台風対策に苦慮していた。また、コーヒーの木の理想的な耐寒気温は18〜23度であるが、沖縄といえども冬の時期になると10度を下回ることもある。このため、沖縄県北部地域である名護市のあるコーヒー農園は、ソーラーパネルを遮光と防風、防寒装備として機能させ、コーヒー栽培とエコロジーを両立させる取り組みをしている。

 また、コーヒーの木を育てる条件に、安定した降雨、水はけの良い土壌というのがあるが、サンゴ礁からなる沖縄では、農業用水の確保がしにくい農園もあり、このあたりも現在検討努力をしている。 そのような条件の中、県内産のコーヒーに厳格な基準を満たした高品質のコーヒー豆だけに与えられる「スペシャルティコーヒー」の認定が、2016年、日本で初めて沖縄県から生まれたことは、コーヒーを沖縄の代表的な農産物の一つとなる一歩となっている。

 北部地域にある国頭村安田で9年前からコーヒー農園を営むご夫婦がつくる「安田珈琲(あだコーヒー)」が、その名誉を得たのだ。

 また、昨年11月にはNHKの朝の情報番組『あさイチ』でも「沖縄珈琲」が紹介されたことで、全国的に認知が高まりつつある。

 大正時代に始まった沖縄でのコーヒー栽培は、百年以上の歳月を経て、着実に歩を進めている。

 

 コーヒーツーリズムで観光PR

 

 そのような中で、コーヒーを生産して飲むだけではなく、新たな観光PRとして位置づけようと、「コーヒーツーリズム」が北部地域のコーヒー農園やカフェで始まっている。大量生産がまだ難しい状況の中で、体験型観光に関心がある観光客向けに実施するこのツアーは、観光のコンテンツに新たな付加価値をつけるだろう。

 豆の収穫から焙煎まで、一連の流れが楽しめるコーヒーツーリズムは、コーヒー豆の収穫が行われる11月から4月という秋から春の時期に実施される。

 秋から春の時期は、沖縄県では肌寒い時期ではある。しかしそれでも本土に比べると暖かい。青い海、青い空というイメージの沖縄だが、コーヒーツーリズムは、冬場の観光コンテンツに新たな面を加えることができる。

 不定期で開催しているという名護市農泊推進協議会が行っているコーヒーツーリズムは、農家民泊やコテージでの宿泊を組み合わせてプランを作っている。

 ツーリズムの内容は、まずは名護市にある約3千5百坪の森の中からスタートする。無農薬・有機肥料で育った真っ赤に熟したコーヒーチェリーを収穫する。およそカップ一杯分ぐらいのチェリーを収穫。

 次に豆の皮むきを行う。果肉と皮、実を分ける。実を焙煎する。ここではコーヒースタンドのオーナーやスペシャリティコーヒーの焙煎士のアドバイスをもらいながらの焙煎。そして自分で焙煎したコーヒーを試飲。この一連の作業が1日で完結している。

 

 結実するコーヒー産業

 

 沖縄産コーヒーを新たな観光PRとして盛り上げるだけでなく、コーヒーを沖縄の農業の新たな柱に位置づけようとキックオフイベント「沖縄珈琲収穫祭2018」を沖縄市「ミュージックタウン音市場」(沖縄市上地)で、3月に開催した。

 沖縄の新たな特産物、しかも日本では栽培が難しいとされていた県産コーヒーの栽培。長い試行錯誤の期間を経て、実を結びつつある。 

 

 

『四季の珈琲』2018 vol.46