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台湾のコーヒー事情 1

注目される台湾のコーヒー

 

 台湾のコーヒーが注目されている。台北市内には、スターバックスやドトール、台湾資本のダンテやミスターブラウンなどのチェーン店に加えて、おしゃれなカフェも登場し、さながらカフェ激戦区の様相を見せている。また、日本と同様にセブン-イレブン等でコンビニコーヒーも楽しめる。

 このようなカフェ文化の先駆けともなったのが、台湾台北市の西門町にある蜂大珈琲(1956年創業、フォンダカーフェイ)や南美珈琲(1962年創業、ナンメイカーフェイ)であろう。創業50年以上を誇る両店は、日本の影響も受けているという。

 台湾のカフェでは、自家焙煎をするカフェもあるが、焙煎された豆を買い、それを店で入れるというカフェも増えている。例えば、Just Go CoffeeのLulu Wang氏は、2011年のSCAA Roasters Choice Competition 第2位、2013年のWorld Coffee Roasting Championship第3位、2015年のTaiwan Brewers Cup Championship第1位に入賞する等、台湾を代表する焙煎士である。

 

 台湾のコーヒーの歴史

 

 茶文化が長い歴史のある台湾では、コーヒーは諸外国からもたらされたものである。1884年にTait Marketing and Distributionがフィリピン・マニラのコーヒーの苗木100鉢を持ち込み台北近くの三峽という地域に植樹したのが最初とされている。また、これは次に出てくる田代安定の報告書「熱帯植物殖育場報告」にも記されているという。

 台湾産のコーヒーと日本は関わりが深い。前述した田代安定(たしろやすさだ)が、日本統治時代(1895〜1945年)の1901年、台湾南部の屏東市に「熱帯植物殖育場」を創設。ジャワ島からコーヒーの苗を輸入し植樹し、コーヒーの栽培が試験的に始まる。1878年に小笠原で始まっていたコーヒー栽培の種子も持ち込まれたという話がある。

 田代安定(1857〜1928)は、鹿児島県出身の植物学者である。1895年に台湾総督府民政局への赴任を明治政府から命じられ、30年間台湾に駐在した。

 また田代は、八重山諸島や南西諸島の動植物や地域住民の習慣やならわし等も調査し、沖縄の結縄文字である藁算についての研究を初めて行なった。そういった意味からは、民俗学者でもある。

 台湾で行ったコーヒーの試験栽培は成功し、その後、コーヒー栽培者が増えていく。

 1907年、東京・上野公園で開かれた勧業博覧会では、台湾で栽培されたコーヒー豆が出品された。この時、日本でまだ珍しいコーヒーを提供する喫茶店として登場したカフェパウリスタも出品していた。日本政府のコーヒー産業政策に関する関心の高さがうかがえる。また1915年の大正天皇の即位式でも台湾で栽培されたコーヒー豆が献上された。

 1919年、屏東市に加え、恒春にコーヒー農場は広がり、優れた品質のアラビカ種のコーヒー豆が生産できた。アラビカ種のコーヒーの木の栽培は1927年から1942年にかけて台湾全土に広がり、1000ヘクタール以上に及んだ。

 1935年にはイギリスにも輸出され、1939年には木村コーヒーが創設される等、勢いを増していった。

 しかし、太平洋戦争が始まると、穀物等の確保が必要になったことから、コーヒー農園のほとんどは穀物の生産へと移行し、コーヒー農園はわずか4・9ヘクタールとなり、コーヒー産業は1953年まで衰退の一途をたどる。

 台湾の西に位置する雲林県にある東山(トウサン)と古坑(グケン)地域は、戦後レジャー産業の開発と同時にコーヒー豆の栽培としても有名になった。1999年9月21日に発生した台湾の大地震の後、雲林県は、古坑のコーヒーを全面に打ち出すようになった。2000年以後は、カフェも増え、台湾でコーヒーが飲まれるようになった。コーヒー栽培を始める農家も増え、再び台湾産コーヒーが注目されるようになっている。

 

 台湾のコーヒーチェーン

 

 最後に、台湾のコーヒーチェーン店を紹介したい。冒頭で、ダンテやミスターブラウンを紹介しているが、それも含めたチェーン店を紹介する。

Ikari Coffee

(http://www.ikari.com.tw)

 Dante Coffee

(http://www.dante.com.tw)

 MR.BROWN

(https://www.mrbrown.com.tw) 

85℃

(http://www.85cafe.com)

cama 

(http://www.camacafe.com)

 

 かなり駆け足で紹介してきた台湾のコーヒー産業の事情だが、今後時間をかけてじっくりとひもといていきたい。 

 

『四季の珈琲』2018 vol.47


参考・引用文献

FEATURE: Taiwanese coffee takes place on world stage(TAIPEI TIMES)

Taiwan coffee industry analysis (Ei-June Lian)